前略、ドデカ愛の真ん中より

※個人の感想です

宇宙遊泳16小節

 現場が無い。それはアイドルオタク一直線だった私にとって、あまりにも死活問題であった。度重なる落選、金欠学生にとっては高価なチケット。バイト先を変えてお金の問題が解決したと思えばコロナ禍による公演中止、家の事情による県外への外出禁止。金はあるのに現場が無い。嗚呼、ライブに行きたい。

 そんな結論に終始するものの中々行動を起こせず、ぼーっとTwitterを見ていた2021年春。私の目にあるツイートが飛び込んできた。

東名阪ワンマン
【Spring Tour 2021「半分古」】

そうだ。Half time Oldのライブに、行こう。

 

 元々曲はけっこう聴いていて、「好きなバンド」を聞かれたら一番にHalf time Oldを上げるくらいには好きだった。けれどライブハウスに行くのが何となく怖くて、ただイヤホンから流れる音に耳を傾けているだけだった。

 けれど、今なら。コロナ禍の今なら。キャパシティ制限で隣の人との間隔が空いているのなら、隣の人に変に絡まれることもそれほど無いだろう。もみくちゃにされることも絶対に無い。今現在のライブハウス、もしかして感染対策を講じていればめちゃめちゃライブハウス初心者に優しいのでは?

 そんなこんなで親と交渉し、名古屋公演数日前にチケットを購入。整番は173番だったけどそんなことはどうでもよかった。というか公演1週間前でもチケットが公式から買えることに感動した。チケ代の安さにも感動した。3000円台って何?実質タダやん。

 Half time Oldを知ってから1年半。よく分からない恐怖感でなかなか足を向けられなかったライブに行ける喜びが、全身を支配していた。そもそも大阪のセトリが最高すぎて震えが止まらなかったのに、それから公演当日まではろくに眠れなかった。

 

 そんなこんなで当日になった。ツアーの読みが「はんぶんこ」なのも、会場のQUATTROが矢場町のPARCOの中にあるのも前日に知った。癖でバッグに双眼鏡を入れそうになったりした。

 めちゃめちゃ階段を上り下りして、近くに並んでたお姉さんとお話したんだけどあのお姉さん元気かなあ。このブログ見てたりしないかな。「ハーフのライブ来るの初めてで……」「ここってコインロッカーありますかね……」って言ってた茶髪ロングの陰キャ女のことを覚えてたらDMください、あの節はありがとうございました。初参戦にめちゃめちゃ緊張しててお腹痛いし暑くないのに汗止まらんしで死にそうだったのでとっても助かりました。

 手汗でびしょびしょになった500円を握りしめて開場を待つ時間が、とっても長く感じた。久々に手にした紙チケットがふやけるくらいに手汗が止まらなかった。サブスクにある曲は全部聴いたはずなのに、「知らん曲きたらどうしよう……」にずっと苛まれていた。

 会場に入って最初の感想は(近いな……)だった。カウンターに上がったところの2列目に座ってたからけっこう後ろの筈なんだけど、それにしても近いよ。こんな距離感でライブ見ていいんすか???だった。今でもライブ会場に行くと(どこでも近いやん……)になる。アイドルの現場に行く時は双眼鏡装備がデフォルトだったからね……。(席運激悪人間)

 

 

 前置きが長くなってしまった。結論から言うと、

私の人生は、シューティングスターのギターソロでひっくり返った。

 かつて人生のどん底くらいに落ち込んでいた私を救ってくれた曲だった。その曲が、今度は私を沼の底に突き落とした。

 あのきらきらした音のソロが上手のギターから鳴っていることを理解した瞬間に、それまでの私は死んでいなくなった。もしくは宇宙空間に放たれて、ギターソロが終わるまでの間無重力を漂っていた。息ができるようになった頃には、もうHalf time Oldの虜だった。ギターの音が目を貫くように眩しかった。音は光を纏えるのだと知った。衝撃に撃ち抜かれたせいか、いつの間にかマスクの下で口が半開きになっていた。

 ラスサビ前の静寂が痛いくらいに美しかった。たった4拍の静寂が、ステージの上からメンバーの鼓動が聞こえそうなくらいの静寂が、永遠に続くような気がしていた。静けさの向こうに確かに星空が見えた。静寂が破られてまた音が光を纏って輝いた瞬間に、静けさの向こうで瞬いていた星が降ってきた。ような気がした。ああ、私は、Half time Oldというバンドをどうしようもなく好きになってしまったんだ、と思った。

 全身が星の光で満たされたような余韻は、終演後会場を出ても、家に帰って布団に潜っても消えなかった。消えるどころか日が経つごとに輝きを増して、当時メインで使っていたTwitterアカウントのツイートはいつの間にかハーフのことで埋め尽くされていた。日常生活で何をしていてもライブの光景が、とりわけシューティングスターのギターソロが頭を離れなかった。

 そこからは転がり落ちるようにHalf time Oldにハマっていった。ハーフの話を見て聞いて呟くために作ったTwitterアカウントがいつからかメインのアカウントになっていた。家の事情で県外のライブに行けないのがもどかしくて仕方がなかった。その分、2回目の参戦となった決起集会は最高に楽しかった。

 

 そして2022年4月、ほぼ1年越しに同じ会場へHalf time Oldのライブを見に行くことになった。何の巡り合わせだろうか。あの時恐る恐るライブハウスに足を運んで手を震わせながら会場入りした私はもういない。けれど、あの時の私に一つだけ言いたいことがある。

 

 ライブハウスのHalf time Oldに出会わせてくれて、本当にありがとう。貴方の勇気のおかげで私は今とても幸せです。

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